インフルエンザ
2・予防
@予防接種を受ける・・・・・・・・・・・・流行前の10〜12月に予防接種を受けておく。
Aバランスの良い食事と十分な睡眠・・体力と抵抗力を上げてかかりにくくする。
B人ごみを避ける・・・・・・・・・・・・・・ウイルスに接触する機会を減らす。
C適度な温度と湿度・・・・・・・・・・・ウイルスは低温・低湿を好みます。
D外出後の手洗いとうがい・・・・・・手についたウイルスを落とし、喉の乾燥を防ぎます。
Eマスクを着用する・・・・・・・・・・・・・人から移るのも移すのも防ぎます。
インフルエンザ・ワクチン
インフルエンザワクチンを打てば絶対にかからないというわけでは、残念ながらありません。米国では健康な成人での発症予防効果は70〜90%程で、小児ではインフルエンザによる呼吸器疾患の予防効果は、1〜15歳の小児では77〜91%であったとの報告があります。また3〜9歳の健康小児では56%の発症予防効果などが報告されています。国内では1歳以上6歳未満の小児では約20〜30%の発病を阻止する効果があり、1歳未満の乳児では対象症例数も少なく、効果は明らかでなかったとしています。
これを見て予防できるかどうかわからないならと接種を見合わせてしまう考えの方がいらっしゃるかもしれませんが、もしインフルエンザにかかってしまっても予防接種をしておけば健康被害を低く抑えることができます。また、インフルエンザに対する免疫力(次回のワクチン効果も)を高めることになります。特に心肺などに基礎疾患をお持ちの人は重症化しやすいのでかかりつけの医師とよく相談のうえ、接種を受けられることをお勧めします。
インフルエンザワクチンは、毎年流行の型を予測したワクチンが用意されます(A型2種類およびB型1種類が含まれており、A/ H1N1 (ソ連)、A/ H3N2 (香港)、B型のいずれの型にも効果があります。)。ウイルスは突然変異をするので、万が一流行した型が違ってしまったとしても、”接種しない”に比べれば接種しておいたほうが重症化が避けられることが期待できます。近年では予測技術も優れてきており、実際の流行とほぼ一致しているようです。
インフルエンザを発症すると個人差がありますが、3〜7日間はウイルスを排出すると言われます。それだけ周囲にうつしてしまう可能性は高くなります。お医者さんと相談の上、なるべく流行前にご家族でワクチン接種を済ませておきましょう。
■ワクチンの有効期間
ワクチンの効果は個人差がありますが、接種後約2週間後から免疫の効果が表れ、以降5ヶ月ほど有効になります。ですので12月中旬までに接種し、1月〜3月の流行時に備えましょう。
■接種スケジュール
必ずかかりつけのお医者さんと相談の上ワクチン接種を受けて下さい。
下記は「1歳以上13歳未満」の小児のスケジュールをご参考までに作りました。免疫効果を考慮して接種の間を4週間空けてあります。二回接種になりますのでインフルエンザワクチンの受付が始まりましたらお早めに予約を取るようにして下さい。個人差はありますが、効果が現れるのはワクチン接種から約2週間ほど後になりますので、おとなも12月中旬までにはワクチン接種を済ませるようにしましょう。
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※13歳以上の人も基本的にワクチン接種は2回ですが、以下にあてはまる場合は1回で免疫力が得られるといわれます。接種時に必ずお医者さんにご相談下さい。(新型ウイルスが発生した場合は2回接種することになります。)
・65歳以上の方
・昨年予防接種を受けている方
・近年インフルエンザにかかった方
■接種用量
年齢 | 接種用量・方法 | 接種間隔・回数 |
13歳以上 | 0.5mlを皮下 | 1回又はおよそ1〜4週間(免疫効果を考慮すると4週間おくことが望ましい)の間隔をおいて2回接種 |
6〜13歳未満 | 0.3mlを皮下 | およそ1〜4週間(免疫効果を考慮すると4週間おくことが望ましい)の間隔をおいて2回 |
1〜6歳未満 | 0.2mlを皮下 | |
1歳未満 | 0.1mlを皮下 |
■接種できない人、注意が必要な人
ワクチン接種ができない人は以下の条件に当てはまる人です。
◆熱のある人(通常37.5度を超える熱)
◆重篤な急性疾患にかかってる人
◆予防接種の成分によってアナフィラキシーショックを呈したことがある人
◆予防接種2日以内に発熱したりアレルギー症状が出たり免疫不全の診断などがある人
◆その他、予防接種を行うことが不適当な状態にある人
また、以下にあてはまる人も注意が必要で、説明を十分理解した上で接種を希望するか決めるようにして下さい。注:ワクチン接種できないと言う事ではありません。
●生後6ヶ月未満の乳幼児
ワクチン接種の下齢制限はありませんが、詳しい研究結果がなく、また母体からの免疫効果が期待できることから接種しないようです。同居するご家族がワクチン接種を受け、予防するようにして下さい。
(ちなみに欧米では、6ヵ月から24ヵ月未満の乳幼児はインフルエンザにかかると重症になりやすいと考えられていて、米国のようにワクチン接種を勧めている国もあります。)
●心臓血管系疾患、じん臓疾患、肝臓疾患、血液疾患等の基礎疾患を持っていることが明らかな人
●過去にけいれんを起こしたことがある人
日本小児神経学会の見解(平成18年3月)では、予防接種は行って差し支えないが、保護者に対して予防接種の有用性、副反応(発熱の時期やその頻度他)などについての十分な説明をして同意を得ること、また具体的な発熱時の対策、けいれん予防、万一けいれんが出現した際時の対策を指導することになっています。解らないところがあれば質問をするなどして十分に説明を受けるようにして下さい。
●てんかんを起こすことがある人
発熱で容易に痙攣重積発作を起こす場合もあるので、てんかんを治療している主治医あるいはその依頼に基づき、事例ごとに検討してワクチンを接種するか、しないかを決めるのが望ましいと考えられます。
●インフルエンザワクチンの成分又は鶏卵、鶏肉、その他鶏由来の物に対して、アレルギーを呈するおそれのある人
インフルエンザワクチンは、その製造過程に発育鶏卵を使うために、ごくわずかながら鶏卵由来成分がワクチンの中に残って、それによるアレルギー症状がまれに起こることもありえます。しかし、近年は高度に精製されてワクチンにはほとんど残っていませんので、軽い卵アレルギーの場合は問題にはなりません。 しかし、重篤な症状が出てしまうアレルギーがある場合(じんましんや発疹、口内がしびれるなど)は、アレルギーの度合いとインフルエンザにかかってしまった時のリスクを考え、かかりつけ医師と十分相談した上で判断してください。
また、安定剤として含まれていたゼラチンへのアレルギー反応が報告されていましたが、現在国内でインフルエンザワクチンを製造している4社のワクチンには含まれていないそうです。
●妊娠している可能性のある女性、または妊娠初期の女性
※出産直後で体力が落ちている女性も医師と相談して下さい。
インフルエンザワクチンは病原性をなくした不活化ワクチンと言う種類で、胎児に影響を与えるとは考えられていませんが、妊娠初期におけるインフルエンザワクチンの調査が国内では十分にされていない為、様々な理由で自然流産の可能性が高い妊娠初期の女性には避けたほうが良いと考えられています。ですが、一方では胎児への影響の報告も無いこともあり、もし妊娠に気付かずにワクチン接種したとしても心配はいらないようです。(欧米では妊婦におけるインフルエンザの重症化し易いことを踏まえ、妊娠13週前後の妊娠初期の女性以外にはワクチン接種を勧めています。今のところ接種による妊婦さんの副反応の報告はありません。)
また、同様に男性側にも影響が無いそうなので、これから妊娠を希望する場合もワクチン接種による心配は無いようです。
●その他、術後間もない人や病後の人
免疫機能や体力が低下していることがあるため、インフルエンザワクチンを接種しても十分な免疫が得られない場合があり、期間をあけて接種した方がよいと考えられています。
予防接種ガイドラインでは、たとえば、はしか(麻疹)や水ぼうそう(水痘)などに感染した場合には、一般的には完全に治ってから4週間はインフルエンザワクチンの接種をひかえた方がよいとしています。主治医によく相談してから接種して下さい。
■ワクチン接種の副反応
一般的には接種した箇所の軽い反応が主です。10〜20%に接種した箇所の発赤、腫脹、痛みがありますが、2〜3日で治ります。まれに、5〜10%に発熱、頭痛、悪寒、倦怠感、めまい、吐き気が起こることがありますが、これも2〜3日で治ります。
また、卵アレルギーの人には、数日間の蕁麻疹、発疹、口腔のしびれや、またアナフィラキシーショックなどの可能性があるといわれています。極めて稀ですが、死亡例の報告もあるようです。
接種後30分は病院内で経過を観察するようにして下さい。(数日して異常に気付く場合もあります。いつもと違うと気付いたら、すぐに担当医にご連絡下さい。)
■定期予防接種の時期と重なる場合
定期予防接種と日程が重なった場合は、基本的には定期の予防接種を優先しますが、地域でのその疾患の流行状況やインフルエンザの流行の状況から、インフルエンザワクチンの接種を優先する場合もありますので、かかりつけの医師と十分ご相談のうえ判断して下さい。
予防接種の種類 | 必要な接種間隔 | |
生ワクチン | ポリオ、麻疹、風疹、麻疹風疹混合(MR)、BCG、水痘、流行性耳下腺炎など | 27日間以上空ける |
不活化ワクチンやトキソイド | DPT、DT、日本脳炎、B型肝炎など | 6日間以上空ける |
■授乳中のワクチン接種は?
授乳期間中にインフルエンザワクチンを接種しても支障はありません。インフルエンザワクチンは不活化ワクチンというタイプで、ウイルスの病原性を無くしてありますので、体内でウイルスが増えることもありませんし、母乳を通してお子さんに影響を与えることもありません。一方、母親がワクチンを接種したことによって、乳児に直接のインフルエンザ感染の予防効果を期待することはできません
なお、インフルエンザにかかってしまい、抗インフルエンザ薬を使用した場合は、薬剤が母乳中に移行すると言われており服薬中に母乳を与えることは避けることとなっています。
■接種したのに風邪をひいた
インフルエンザワクチンはSARSや高病原性鳥インフルエンザはもちろん、他のウイルスやその他の病原体による「かぜ」(かぜ症候群)には効果はありません。
また、インフルエンザワクチンを打っても5人のうち1人はインフルエンザにかかってしまいます。ですが、その場合でも未接種の人より接種して免疫力を付けている人の方が症状や期間が軽く済むそうです。
適度な温度と湿度
冬場では室温を20〜25度くらい、湿度は50〜60%に保つようにしましょう。
気温が下がると鼻甲介(鼻の中の空気の通り道)の粘膜が膨らむことによりあえて鼻の穴を狭め、冷たい空気が直接喉に入らないようになります。暖房で室温を高くするとどうなるでしょうか。鼻甲介は広がりますが、空気が乾燥したままだと喉の粘膜を傷めてしまいます。冬場の暖かいだけの室内で喉が痛くなるのは、こういった訳があります。
空気が乾燥すると喉の粘膜の防御機能が低下し、気道内の病原菌を排出する線毛の動きが悪くなって感染をおこしやすくなります。逆にインフルエンザウイルスの空気中の生存率は高くなってしまいます。特に乾燥しやすい室内では加湿器などを使って、十分な湿度(50〜60%)を保つことはインフルエンザウイルスを防ぐのに効果的です。ただし、気温が低過ぎると湿気を含みにくくなるので、効果的に使用するにはエアコンの暖かい空気が流れるところに置いて湿気を含んだ空気が部屋全体に行き渡るようにし、必要以上に室温を上げ過ぎないことがポイントです。
ただ、加湿しすぎると結露で家具を傷めたり、場合によってはカビが発生することになる場合もあるので。時折空気の入れ替えをしたり、部屋の空気を循環させるなどして湿度の上げすぎに注意しましょう。また、加湿器内にカビが発生するのを防ぐ為、タンクやフィルターは清潔にするようにし、接続部の残り水の清掃もこまめにするようにして下さい。
手洗いとうがいのポイント
手洗いとうがいは簡単にできる予防方法です。
ウイルスはいたるところにいます。人ごみを通れば咳やくしゃみなどで飛沫感染する恐れもあります。外出から帰ったら何をも触れてなくとも手洗いとうがいをまずしましょう。
■手洗い
手についたウイルスが手を介して、口へ移動し、喉に入り込むのを防ぐのが手洗いです。インフルエンザウイルスは石鹸の泡に30秒以上包まれると死滅するそうです。石鹸をよく泡立てて手を洗いましょう。
・よく泡立てて手と手首までに泡を行き届かせます
・手のひらを洗ったら手の甲も洗い、指の間も洗います
・指を一本ずつ逆の手のひらに包んで回し洗いします
・爪の生え際にウイルスが残ることが多いので爪の周りも指の腹で洗います
上記のように丁寧に洗えばこの時点で30秒は経っていると思います。後は泡をよく洗い流して下さい。手洗いは、10〜15秒程で洗うと菌が浮き出てきただけになってしまい(実験データ有)一番手の表面に菌がある状態でタオルで拭いてしまうことになってしまいます。急いでいてもしっかり洗いましょう。タオルもこまめに替えると尚良いでしょう。
現在では外気にさらされる顔などにもウイルスが付くとして、顔も洗うと良いとの記述が増えています。
■うがい
うがいについては皆様にウイルスを除去する有効な方法としてご紹介したかったのですが、調べてゆくうちに確かな情報に乏しいことがわかってきました。以下の事項を知って頂いた上で、ご判断していただければと思います。
●国立感染症研究所感染症情報センターや厚生労働省のホームページでも予防としてのうがいをすすめているように、一般的に言われて続けてきたことである。
●うがい液は鼻因腔に届かないものの、うがいの時のえんげ運動(飲み込み)が、かぜの予防に効果的であるという説がある。また、他にうがいをすることによって喉が潤うことが効果に繋がるという説もある。
●インフルエンザウイルスは気道につくとおよそ20分程度で細胞の中に取り込まれてしまうので、20〜30分おきにうがいをしないと効果は無いのではないか?
●ウイルスは喉よりも鼻の粘膜から高頻度で検出される。鼻の粘膜はうがいで洗い落とせないので、うがいの効果は限られている。
●うがいを励行したグループとしないグループを比べると、励行したグループの風邪をひいた割合が低かった。(アンケート調査程度)
●緑茶でうがいをすることによって、緑茶に含まれるカテキンがウイルスの増殖を止める働きがあるので有効である。(臨床データは無かったが、実験室でのカテキンには効果があった)
●イソジンにはインフルエンザウイルスを殺す作用を持っていない。(イソジンの使いすぎは常在菌を減少させ喉を痛めるとの記述も←詳しいデータなし 確かに”インフルエンザウイルスに効果がある”とは使用説明書には書かれていない。)
●紅茶での5秒間のうがいで100%感染を阻止することができる。使用した紅茶エキスの濃度は0.25%で100%阻止できた。市販の紅茶の濃度は0.5%。
●欧米では風邪の予防に「うがい」をする習慣が無く、予防の為のうがい薬も市販されていない。
●約380人を無作為で「うがいしない」「水で1日3回以上うがい」「ヨード液で1日3回以上うがい」の3群に分け、60日間調査。結果は水うがい群はうがいをしなかった群より4割も風邪にかかりにくいことがわかった。一方ヨード液うがい群とうがいをしなかった群では差ががないという結果。水うがいに予防効果があるとして、うがいの習慣のない海外へ発信したいと教授は話す。(京都大保健管理センターの川村孝教授調べ)
上記の様々な意見を見て、うがいの有効性に少々疑いを持つ方も多いでしょうが、最後の川村教授の記事は昨年10月に新聞発表された新たな結果であり、うがいの効果はあると言えるようです。
うがいのできない小さいお子さんについては、先の『適度な温度と湿度』でふれたように、喉の粘膜を乾燥させて防衛機能を低下させないように、お水またはお茶・紅茶・ココアなどでこまめに水分を摂って喉を潤し、防衛機能を働かせたほうが良いように思いました。皆さんはどうお考えになりましたでしょうか。(当会 小島著)
マスクを正しく活用する
冬期のように空気が乾燥してくると、空気中に漂っているインフルエンザウイルスが長生きできるようになり、一方、乾燥した冷たい空気でのどや鼻が弱ってインフルエンザウイルスに感染しやすくなってしまいます。
マスクに期待する効果は喉の保湿と予防の他に、インフルエンザにかかってしまった場合に他の人に移さないという使い方があると思います。以下の点に注意して活用するようにしましょう。
■マスクの粒子透過性
空気中に浮遊しているウイルスを吸い込んでしまったり、喉を乾燥や冷えから守る為にマスクをします。市販されているマスクは様々なものがあるので、商品説明を確認した上で用途により購入して下さい。
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比べてしまうと高性能のものをとつい考えてしまいますが、そういったものは値段も高くなります。コストを気にせずに使える方は良いのですが、マスクの衛生面を考えると毎日清潔なものを使用したいものです。ある程度のものを洗い替え(商品により日干しや消毒などできるものがあります)を用意して使用するか、使い捨てのものを使用するか、それぞれお考になってお使い下さればと思います。
また、防ぎたいウイルスの形態も人から感染することを考えると、飛沫物質(咳やくしゃみで空気中に放出された水分のあるもの)や飛沫核物質(飛沫物質が乾燥して空気中に漂っているもの)が中心になってくるかと思いますので、この点もお考えになってお決めいただくと良いかと思います。
■マスクの使い方
正しく着用されていれば、着用している間(そのマスクの防止対象)は防げると思います。ただし、花粉症の方を想像して頂くとわかりやすいと思うのですが、インフルエンザウイルスが顔や髪やマスクの外側にも付いていることに注意して下さい。そしてそれらを触った手で粘膜がある目や鼻を触ったり、あるいは手に持って食べたり飲んだりすると、口から入りこんでしまいます。鼻をかんだ前後や飲食の前は手を洗うようにしましょう。
また、他の人へインフルエンザを移さないようにマスクを使用する場合は、不用意にマスクを触ったりするとその手で他に触れた時に周囲に拡散してしまう可能性があるので注意が必要です。
それから、マスクも長時間使えば雑菌が繁殖しやすくなります。特に鼻水が出ている時などはガーゼマスクにして、こまめに取り替えるほうが良いようです。